心にうつりゆく由なしごと

漫画感想『アクタージュ act-age』

漫画『アクタージュ』のネタバレを含みます。その上で、ネタバレを私の体液で煮込んだ文章がこちら。

もつ煮込みかよ。

 

『アクタージュ act-age

考察は苦手なので、一言で。

面白い。

 

本来、連載4話目で切り捨てたはずの漫画だった。彼女の本質を色濃く描いた3,4話目は、未知を恐れる私には、どうにも受け入れ難かった。

でも、最近すごく面白いのよね。

 

夜凪景というキャラクター

主人公、夜凪景は超と接頭語が付くほどの本能型役者。役柄の心情を演じるため、自らの過去の感情を追体験する演技法、自分以外の誰かになるメソッド演技をある種極めた少女。

その能力を駆使し、1,2話では感情を演じきる。本能のままに動いたとも言うが……。

 

件の3,4話目では、時代劇のエキストラとして参加した景は物語の顛末を受け入れられず、本質のまま生きてしまう。

圧倒的に他人を演じる事が出来ていない。せっかくのメソッド演技という異能もお荷物でしかない。演じる事が基本となる世界において、致命的欠陥だ。初っ端にやるのもわかる。

でもさ、夜凪さん、その行動は人としてどうなの? と、その行動の理由を知っても納得できない。私はエキストラの一人になって、彼女に不信感を持った。

 

最終的に、役者としての景を見出した演出家、黒山墨字の言葉によって活路を開き、同時に手段でしかなかった演技に面白さを見た。

ここでかよ。

 

まぁ、打ち切りも近いだろうな。と、不快感を抱えたままの私は、その頃はそんな目で見ていた。続いて始まったシリーズ、デスアイランド編も名称的に微妙だったし、5,6話で登場した若手トップの女優、百城千世子にも魅力を感じなかった。

ぶっちゃけ、景も千世子も人間的美しさが見えなかった。

千世子はこの時点ではよくわからないが、景は輪を乱す存在でしかない。一人芝居でも極めなさいよ、オラァ! と、私は不快を感じたままなのだ。

作中でも、独り善がりな彼女は異物であった。

 

評価が変わったのはscene13とscene22。デスアイランド編を経て、周りを巻き込む彼女の演技は認められた。彼女の異能は武器として認められたのだ。

やっぱり掲載順後ろの方だなー、今回の新連載陣は不作だったなーとか偉そうに見ていた私も、いつのまにか、夜凪景に魅せられていた。

 

デスアイランド編に入ってからは、武光くんと茜ちゃんの存在が大きい。特にscene13以降の茜ちゃんはとても魅力的だ。

 

湯島茜ちゃんの可愛らしさ!

scene7より登場の湯島茜ちゃんが可愛らしい。一度は景のメソッド演技が理解できず、仲違いしてしまう。

撮影を通して、自分の性質に悩む景と和解し、彼女を認める一人だ。

 

もう一度言う。

scene13以降の茜ちゃんが可愛い。

 

茜ちゃんの出番増えんかな。

 

夜凪景と北島マヤ

演劇漫画と言えばガラスの仮面だと思っている。かの作品の主人公、北島マヤは憑依型女優。徹底的な役作りをし、仮面を作り上げて舞台の上では完全に役柄となる。

加えて彼女の本質は、天才的なまでの演技の才能。自ら共演者との調整ができないという弱点や、凡凡な身体能力が表現力に追いつかないと言う弱点もある。それでもなお、天才の一言に尽きる。

圧倒的才能を持って、舞台あらしと評される彼女は、本能的に観客を知っている。

 

仮に、景がマヤを見たときに、何を感じるのだろうと私は思う。マヤは景に必要なモノを全て持っているのではないだろうか?

メソッド演技の景も、もちろん憑依型女優に分類される。現在の連載中の銀河鉄道の夜では同じく憑依型役者の阿良也との絡みによって、憑依型という性質を学んでいるのだろう。

そうして見た時、北島マヤは夜凪景のある種の理想に近い場所にいるのではないだろうか。もちろん、その本質の違いが、彼女らを全く違う女優に育てるのだろう。

それでも私は今、夜凪景の未来に北島マヤの姿を見ている。

 

さてはて。

役者夜凪景は、いかような成長を見せてくれるのだろうか。