心にうつりゆく由なしごと

漫画感想『マチネとソワレ』

感想の特性上『マチネとソワレ』のネタバレを含みます。ゲッサンはコミックス派なので、4巻ラストまで。

ネタバレを私見で串刺しに、cccRYベースのタレに漬け込み、直火でこんがり焼き色をつけました。感想の串焼き。

 

『マチネとソワレ』

『魔王』『waltz』『VANILA FICTION』の大須賀めぐみ先生の現在の連載中作品。

 

まぁ、語彙も少なく、考察力もなあなあなので、一言で言うよ。

滅茶苦茶面白い!

大須賀めぐみ先生、元々大好きだけど、もっと好きになった作品。何というか、真正面からジャブ、ストレート。全力で殴られる感じの作品。waltzの次に好きだわ。今んとこ。

 

いよいよ明日、

俺は爆弾を落とす‼︎

主人公、三ツ谷誠の序盤セリフ。物騒なセリフだが、何も間違ってはいない。抱え続けたコンプレックスを吹き飛ばす。彼の野望。

正直ね、1話目はひたすらに息苦しいそうなってしまうのは理解できる。そんな境遇の奴がいれば、人間の関心なんてそんなもの。甘い考えだと、わかる。

ただ、舞台の上を、役者である事を、この世で唯一、「生きている」と感じられる場所と語る誠にとって、どんな意味を持つか。何というかね、そんな感情知らないはずなのに心をクシャクシャに丸め、踏み潰される。ねじ切られ、抉られ、へし折られ、唾を吐きかけられ、ないがしろに、引き裂かれる。

ありとあらゆる責め苦を持って、追い詰められる。ここを乗り越えれば、変わるのか? 

兄は、三ツ谷御幸は、もういないんだ。

そして仏壇の前のシーン。マミー、それは勘弁してくれよ……。演劇をするという行為が、誠を嬲る。

水玉タクシー。

三ツ谷誠は街へと降り立つ。

 

不思議の国の誠

非現実的世界は徐々に現実味を帯びていく。誠を迎え入れたのは、遂に手にした栄光を死んだはずの兄が手にしている世界。

 

迷い込んだのは、兄ではなく、自分。誠が死んだ世界。それを誠は受け入れられない。もがきながら手にしていた僅かなモノすら吹き飛んだ。

それを誠は受け入れられない。

 

そうして、気がつけば、ヤクザに囲まれ絶体絶命。あまりのテンポの良さにひたすら絶望。希望を打ち捨てられて生きてきたのに、なんなのよ、この仕打ち。

ボッコボコに殴られ、穴の底。ここが底辺。頭に浮かぶはお兄ちゃん。誠くん、兄貴に呪われてんのね。

 

さて、ここから誠の逆襲の始まりだ。

 

芝居の楽しさを実感し、語る言葉はワガママ極まる。

割とこの辺から本格的に面白くなってくる。

ここまでの誠は、片鱗は見せていたものの、実は兄貴のネームバリューで売れていただけだった説もあり得そうと、読むこともできた。気がつけば、誠のうちに秘めたる執念に魅せられている。誠くん、芝居ができるただの根暗じゃなかったのね。

兄貴に呪われていると前述した。付け足そう。芝居に呪われている。

 

ハムレット編』

与えられた役はレアティ、いや、山下孝雄。山下君、あまり好みじゃない。

兄貴を演じるだけの実力はあるだけあって、山下を演じる事は成功する。結果的に舞台としては失敗するんだけどさ。ただね、そういうキャラクターの山下レアティーズを作り上げているのは演出家の天戸さんじゃないのん? この舞台は、アーマードハムレットですからね。なんとなく書いたけどアーマードハムレット表現いいな。壺。

解釈違いとか甚だしくない? と、思ってしまうのが私な訳で。まぁ、演じるのは自由だけどね。本来は役者のキャラクターと演出家の擦り合わせで組み上げていくものだからね。全部山下が悪い。目立ちたくて作ったキャラクターじゃないよね? え、被害者は天戸陣営? 悪いのは主人公陣営? そうだね。プロテインだね、

 

何にせよ、圧倒的実力で場を荒らし、舞台を滅茶苦茶にした誠は約束を履行する事になる。針千本でもいいのよ? ありとあらゆるを諦めることになるけど。

あらかじめぶつかるべき、役者と演出家のエゴは、破裂して大爆発を引き起こした。

 

マネージャー世良丞の出番だよ?

 

あのウジウジした気分をぶった切るシーン好きよ。アレのせいでますます人にオススメし辛くなったけど。

 

『泥舟出航編』

とりあえず、勝手に名付けた。多分、ハレルヤカンパニー編とか、どしゃ降り天国編が妥当だとは思うけど。

 

さて、この漫画、殺意高くない?

読者の心に致命傷を与えようとしてくる。日下部さん、やめてくれ。その技は、オレに効く。やめてくれ。

 

さて、『飛び出せポンコツ丸(仮名)』のせいで、文字通りボロクソな舞台。次々に襲いくる絶望。

失敗しか見えない。誠君の最後の舞台にご期待下さい。

 

からの、大先生の登場。小鳥遊大先生と三ッ谷誠の即席タッグだ。大半を誠の能力に頼る無茶。それすら選ばなければいけない絶望。

さて、今回の舞台。また、兄貴と不思議な繋がりを持った舞台。どちらもポンコツを抱えている。

舞台の規模や、その存在が舞台に与える意味も違う。かたや話題作りの芝居素人。かたや、劇団の屋台骨。

兄貴は恐怖で支配した。

 

メタ的な話、この舞台が失敗すれば話が終わってしまう。落とし所はどうあれまとめきるのだろう。日下部さんを物語の異物として利用した小鳥遊大雅。彼の目的は誠の力を測ること。

業界で干されている誠には是非とも欲しい繋がりだ。多分この繋がりから次を得るんじゃないかな。 

 

さぁ、頑張れ誠! 立ち向かえチキンハート!

といったところで4巻終了。早く5巻出ないかしらね。

 

褒められたい!

誠を語る上で忘れてはいけないのが、彼の野望。うちに秘めきれない自己顕示欲。

空気椅子でくつろいだり、殴られた体勢で停止したりと膨大な基礎が無ければできない事をやってのけている。2号と呼ばれながらも、VANILA FICTIONの主人公に抜擢されれば、驚かれながらも、若手では抜きん出ていると評価される。

芝居の為にありとあらゆるを費やしてきたんだろう。しかし、誰も自分を見てくれない。

 

偉大な兄貴の呪いは深刻だ。

 

きっと正当な評価は誠には見えなかったんだろうね。

結果、漏れ出す自己顕示欲。成功のイメージはここにある。

 

とりあえずね。面白いよ。